多摩川河口干潟の現地見学会に参加して
                                       明石 哲也
1 調査日時
8月1日(日)、船長の小松崎さんの案内で、つり船小松丸に乗り午前9時から午後3時まで6時間、多摩川河口の生物探検に行きました。活き活き東京湾研究会の主催(幹事;河川環境管理財団の大野幸正さん)で実施され7名の参加がありました。         
気象は快晴で最高気温32度の真夏日でしたが、舟上は川の上なので暑さをあまり感じることなく、快適な調査でした。当日の潮位は大潮で午前11時頃の干潮のピークに合わせて干潟への上陸を目指しました。
2 調査目的
 多摩川の河口は汽水域で、上流域の水質向上に伴い近年、動植物の復活が期待されています。定期的な水質観測と共に、動植物の定点観測をすることにより貴重なデータの収集が得ることが期待できると思います。
3 調査個所
多摩川河口は東京都と川崎市の境界になっていますが、大師橋から下流1kmの海老取川合流までの地域は、左岸の東京都の川岸近くまでが川崎市の区域です。一方、その上流では反対に川崎市寄りに境界が振れます。
明治当初に境界を定めたのですが、その後の洪水で流路が変わり昭和当初に現在の堤防による流路が確定したために境界が振れているようです。
ネズミ島は川崎市が大きく広がった地点にありますが、地図によっては記載されていないし、名称も記載されていません。現地ではバードアイランドの立て札があるのが確認されました。
今回の調査個所は次の通りです。
@ 大師橋下流右岸
A ネズミ島(バードアイランド)
B 羽田空港沖(河口左岸)
C 多摩運河出口(河口右岸)
4 調査法
次の方法で生物調査を実施しました。
@ 掘削調査(シャベルで30〜50cmを掘り、生物の調査)
A 投網調査(魚の捕獲状況)
B 貝類、カニ、ゴカイ等の採取調査

5 概要
@ 大師橋下流右岸にて
 我々が近づくと、大量のカニが葦の間から逃げ隠れする。漁師さんによれば、鬱蒼とした大量の葦が多摩川の浄化に大きい役割を果たしているようです。砂地を掘ると、大きいゴカイが見られ、釣り人もまた多く来ていました。
A ネズミ島(バードアイランド)にて
 ネズミ島の半分は低木に覆われている。周回すると、周囲は砂地の崖となっていて、シャベルで掘ると、ゴカイとカニがぎっしり詰まっていて、仲良く共生しています。カニは小さい子カニが穴の中で生息していましたが、シャベルで掘ると無数の子カニが逃げ惑い、調査とは言え、かわいそうな気がしました。時期的に子カニが多いのか等の疑問は感じた次第です。
ネズミ島のその他半分はヘドロ混じりの砂地ですが、右岸沿(川崎市寄り)は貝殻のみで生息している生物が見当たりません。右岸沿は多摩川の流路が浅く船舶も通行不可で、水の流れが少ないためではないかとの意見もありましたが真相はよく判明しません。
左岸沿は貝やゴカイが多く生息していて、たくさんのかもめが、しきりに貝類を捕食していました。
大野さんが投じた投網には小型のハゼ、ウグイが若干採取できましたが、大量の魚影をこの日は確認できないのが残念でした。
B 羽田空港沖(河口左岸)にて
羽田東急ホテル前の砂地には浜遊びの家族が多少見られましたが、さらに河口まで下り湾岸線の多摩トンネルの手前、空港A滑走路沖の干潟に上陸しました。ここは干潮の時に一時的に干潟となります。船でないと行けない所です。
アサリはほとんど取れず、少量の潮吹き貝とバカ貝、マテ貝が採取できました。
久しぶりに子供の頃の感触を思い出し、熊手で表面を薄く掻き寄せると熊手の先に若干、引っかかる感じがした時に、その位置を手で掘り下げると貝を捕獲できます。貝は一連の帯状にいるようで、順繰りに採取できました。
 漁師さんの話では、一昔前はアサリが湧くように大量に取れたとの事だが、近年はあまりとれないとのことでした。その原因は何か。窒素、りんのみの富栄養化対策が原因か、その他の微量物質が原因なのか等、楽しい議論もできました。
 5分おきにA滑走路から夏休みの子供を乗せた、いろんな種類の航空機がまさしく真上を飛び去ります。漁師さんが用意したアサリ汁と羽田沖の茹カニのご馳走に舌鼓を打ちながらの昼食は絶品でした。
6 あとがき
 東急空港線の天空橋は東京湾のつり船を利用する時に良く使いますが、この近くの干潟にも、たくさんの人が釣りや浜遊びに来ているのに今回、気付きました。次回の再訪は大量ないし大漁の生物層を期待したいと思います。また東京湾の方にも出て、おいしい
『お魚なさん』とも会いたいような気がします。